2014年03月4日丸谷才一 『思考のレッスン』

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こんな文章で埋め尽くされている。

ポオについて僕は、かねてから不思議に思っていたことがあって、その話をしました。というのは、だいたい探偵小説に出てくる探偵というものは、作者と同じ国の人間になるのが普通でしょう。アガサ・クリスティのポワロがベルギー人という例外はあるけれど、それ以外はみんな外国人ですよ。ところがポオの場合は、同国人でないばかりか、ポオが一度も行ったことのない、フランスのデュパンという男にした。このことについて僕がこんな事を言った。
「名探偵は最高の知性の人であるわけだから、その背後に文明がないと名探偵が成立しない。それに、そもそも探偵小説にふさわしい事件は、背後に文明がないと成立しない。ところが当時のアメリカにはそれだけの貫禄のある文明がなかった。それでフランスに持って行ったんでしょうね」
そうしたら吉田さんが、「その意見はいい」とおっしゃって喜んでくださった。でも、そのあとはずっとお付き合いはなかったんですよ。


さらりとこんなことに気づき、仮説を立ててしまう。今、丸谷さんのようなタイプの知性のある人がどれだけいるだろうかと考えると惜しくなる。