隣の席の大学生カップルが、面接官の役割を女の子が担当して就職活動の練習をしている。「社会学部で何を勉強しまして来ましたか?」など、いかにも聞かれそうな質問に対して、男の子はいかにも準備をしてきた回答をする。どのような質問に対しても、しっかり準備している。ちゃんと準備してきた答えを間違えずに言えているという点で評価できるのかもしれないけど、それ以外にとっかかりになりそうな部分が見つからず、こういう受け答えを何十も繰り返さないといけない企業の面接担当の方々に同情してしまう。

一通り練習が終わった後、男の子は女の子に「どうだった?」と講評を求めると、女の子は「準備していた答えを、暗記していないようにみせようと話していた」と指摘する。その答えを聞いた男の子は拗ねて黙ってしまった。男の子は、女の子に自信をつけてもらいたかったんだろうな。女の子は女の子で、彼を直接傷つけないように、若干婉曲的に「答えを暗記して面接しても印象はよくない」ことを伝えようとしたんだろうな。おじさんしみじみ。

黙って落ち込んでいる男の子の手を女の子は黙って握っている。この話、男の子にいいところがないのだけど、そんな彼のことを好きで一緒にいる女の子の気持ちに彼の魅力のヒントが隠されていて、その掛け替えのなさに男の子が気が付いて自分の言葉をつかって面接の場で表現できたら、きっと面接は成功するんじゃないだろうか。とはいえ、この男の子は大学時代の俺だよなと、おじさんは彼らが帰った後もしみじみするのでした。

2016年03月2日    diary

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